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October 12, 2026

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米国のコネクテッドカー安全保障法案の現在地 ~休会中にも広がる超党派の支持と、残された論点~

連邦議会が実質的な審議を休止している間にも、支持を広げ続ける法案があります。「2026年コネクテッドカー安全保障法案」(Connected Vehicle Security Act of 2026)です。4月に上院へ提出されたS. 4429と、5月に下院へ提出されたH.R. 8730です。中国などの外国の敵対勢力に関連するコネクテッドカーや、そのソフトウェア・ハードウェアを規制するこの法案は、休会中も超党派の支持を集めています。

下院では、共和党のJohn Moolenaar議員が法案提出者となり、10月9日時点で、民主・共和両党から計134名が共同提出者に名を連ねています。注目すべきは、その増加の勢いです。実質的な審議が行われていない9月17日から10月9日までの間だけで、37名が新たに共同提出者に加わりました。なかでも、習近平中国国家主席を迎えたホワイトハウスの歓迎式典と米中首脳会談が行われた9月24日には、11名の下院議員が共同提出者に加わりました。 

上院でも、オハイオ州選出の共和党議員Bernie Moreno氏が提出者となった法案に、9月30日までに民主・共和両党から計57名が共同提出者として加わりました。

今週は、休会中も注目を集め、超党派の支持を広げている2026年コネクテッドカー安全保障法案について解説します。

中国製のコネクテッドカーや関連技術を規制する動きは、今回が初めてではありません。バイデン政権下では、商務省の産業安全保障局(Bureau of Industry and Security、BIS)が、2024年9月に「情報通信技術・サービスサプライチェーンの確保:コネクテッドカー」(Securing the Information and Communications Technology and Services Supply Chain: Connected Vehicles)という規則案を発表し、2025年1月14日に最終規則を公表しました。段階的な導入スケジュールが定められているものの、この規則により、特定の中国製またはロシア製のソフトウェアやハードウェアを搭載したコネクテッドカーの輸入や販売が禁止されることになります。

ただ、この規則には、「一般許可」(General authorization)と「個別許可」(Specific authorization)の仕組みが設けられており、産業安全保障局は一定の場合に、本来は禁止される取引を許可することができます。実際、今年5月26日、スウェーデンに本拠を置き、中国企業が過半数を所有するボルボ・カーズが、個別許可を取得したと発表しました。この規則の下では、議会への説明なしに、行政府の判断により規制対象となる取引が許可される可能性があります。

中国の習近平国家主席の訪米を目前に控えた9月、トランプ大統領がFoxニュースで、中国企業が米国内に自動車工場を建設し、米国人を雇用するのであれば構わないと発言したことで、米国の自動車業界や議員の間で不安が広がりました。この発言後、新たに共同提出者に名を連ねたのは、上院議員17名、下院議員54名です。

2026年コネクテッドカー安全保障法案については、上下両院に同様の法案が提出されています。下院法案H.R. 8730は3つの委員会に付託されましたが、まだ委員会審議は行われていません。上院法案S. 4429は、上院商務・科学・運輸委員会(Senate Committee on Commerce, Science, and Transportation)に付託され、7月22日の法案審査会(マークアップ)で修正のうえ本会議への報告が承認されました。その後、9月22日に上院本会議に報告されました。

上院に報告された法案でも、産業安全保障局が一般許可や個別許可を与えることが認められています。ただし、許可を与える際には、所定の事項を含む詳細な通知を連邦議会に提出することが求められます。行政府が個別許可を与える場合に議会への通知を義務付けることによって、その判断に対する議会の監視を強めようとする趣旨がうかがわれます。

この法案は超党派で支持されていますが、議論となり得る争点がないわけではありません。ここで、マークアップの際に、テキサス州のTed Cruz上院議員が指摘した二つの点をご紹介します。一つ目は、バッテリーに組み込まれた電子システムに関する規制が広範であるために、車一台当たり約5,000ドルの追加コストが生じるとして、定義を変更するための修正案を支持するという点です。民主党議員からもバイデン政権下で制定された規則と同程度の範囲に狭めるべきだとの賛意が示されましたが、規制の猶予期間は十分に与えられているとの反論もあり、この修正案は賛成9、反対19で否決されました。法案提出者であるMoreno上院議員は、別の機会に、ヒズボラのポケットベルが一斉に爆発した事件を例に挙げ、バッテリーに組み込まれた外部との接続システムを規制することは、国家安全保障の観点から重要であると述べています。 

Cruz上院議員が指摘したもう一つの問題は、懸念対象外国事業体(Foreign entity of concern)の判定に用いられる持分・支配基準です。上院委員会が報告した修正後の法案では、コネクテッドカー関連事業体について15%、対象ソフトウェアや車両接続システムのハードウェア関連事業体について25%の基準が設けられています。Cruz上院議員は、中国系の2事業体が合計19%の持分を保有しているとされるメルセデス・ベンツを例に挙げ、この基準が適用されれば、同社による米国での自動車販売が禁止される可能性があると指摘しました。また、同社がアラバマ州とサウスカロライナ州に工場を有していることを踏まえ、米国内の雇用への影響も問題視しました。同議員は、一律の持分比率ではなく、対米外国投資委員会(Committee on Foreign Investment in the United States、CFIUS)と同様の審査基準を採用すべきであると述べましたが、この点については指摘にとどめ、修正案は提出しませんでした。

最終的に、上院委員会では反対なしに、上院本会議への報告が承認されました。これだけ多くの議員が共同提出者として名を連ねている2026年コネクテッドカー安全保障法案ですが、Cruz上院議員が指摘した二つの問題点は、今後本会議で審議される際に議論を呼ぶ可能性があります。また、中間選挙後は、国防権限法(National Defense Authorization Act、NDAA)などの重要法案の審議が優先されると考えられるため、コネクテッドカーに関する法案が今期中に成立するかどうかは不透明です。たとえ今期中に成立しなくても、超党派の賛成を経ている法案なので、次の会期でも再提出され、審議される可能性は高いです。

自動車メーカーだけでなく、部品、ソフトウェア、通信機器などを供給する日本企業にとっても、米国におけるコネクテッドカー規制の動向は、サプライチェーンや市場アクセスに直接影響し得る重要な問題です。その意味でも、今後の動向を注視すべき法案といえます。

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