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October 19, 2026

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米国の国防予算確保、レームダック・セッションの焦点

~リコンシリエーションは民主党との妥協を回避する切り札となるか~

中間選挙が幕を閉じた後、米議会は新会期(第120会期)が始まる前の「レームダック・セッション(現職議員の任期満了までの残り会期)」へ移行します。現在、各種予測では次期下院で民主党が多数党となる可能性が指摘されており、トランプ政権は、共和党が上下両院の多数党として主導権を握る今の会期中(第119会期)に、やり残した最重要課題を実現するように圧力を強めることが予想されます。米国の防衛予算や軍事費の行方を追ううえで、注目されるのは毎年制定される「国防権限法(NDAA)」です。一方、先日、ハドソン研究所のイベントに登壇したラッセル・ヴォウト行政管理予算局(OMB)局長は、「リコンシリエーション(予算調整措置)」による国防関連資金の確保を重視していると解釈できる発言をしました。そこで今週は、リコンシリエーションによる軍事予算の確保とNDAAの違いについて解説します。

重要な違いの一つとして、リコンシリエーションでは、上院のクローチャー動議を必要としない点をあげることができます。上院では通常、討論時間に制限がなく、議事妨害を打ち切って採決に進むには、クローチャー動議の可決が必要ですが、このためには、5分の3以上(通常60票)の賛成が必要となります。しかし、リコンシリエーションによる場合は、法律上討論時間が制限されているので、クローチャー動議が不要です。

上院議員は各州から2名ずつ選出され、定員は100名です。賛成票と反対票が同数になった場合には、副大統領が最後の一票を投じることになります。したがって、共和党上院議員のうち50名が賛成票を投じれば、民主党議員の賛成なしにリコンシリエーション法案を可決できます。つまり、共和党が両院を支配し、共和党の大統領と副大統領が在任する現在、リコンシリエーションによれば、バード・ルールという制限はあるものの民主党と妥協せずに国防予算を確保できます。

これに対し、NDAAや通常の歳出法案では、上院で審議する際、討論時間の制限が定められていません。最終可決は単純過半数ですが、討論を終結させて採決に進むには通常60票が必要です。そのため、民主党が反対すれば、共和党は何らかの妥協を迫られます。

これ以外にもリコンシリエーションが重視される理由があります。アメリカでは、授権法(Authorization Act)だけでは、予算の歳出が認められておらず、歳出法(Appropriations Act)が必要になります。NDAAは、National Defense Authorization Actの略です。つまりNDAAは主として国防政策を定め、将来の歳出を授権する法律であり、実際に資金を支出するには、原則として、歳出法を制定することが必要です。歳出法についても、上院での最終可決は単純過半数ですが、討論を終結させて採決に進むには、NDAAと同様に60票の賛成が必要になります。つまり、民主党が反対すれば、共和党は民主党と何らかの妥協をする必要があります。

リコンシリエーションは、本来、既存の税制や歳入歳出法を予算決議の財務目標に整合させるための調整という目的を達成するための法律成立手続きで、歳出法を成立させるために認められた手続きではありません。しかし、リコンシリエーション法案の中に、一定の事業について、通常の年次歳出法によらず、複数年度にわたって利用可能な資金を認める条項を含むことが可能です。この場合、その資金は、毎年度の歳出法によって確保する資金とは異なる形で利用可能になります。共和党は、最近この方法を頻繁に使っています。

例えば、2025年に成立した、いわゆるOne Big Beautiful Bill Act(OBBBA、P.L. 119-21)は、国防関係の一定の事業について、通常の年次歳出法とは別に2029年9月30日まで利用可能とする資金を確保しています。この方法は、国土安全保障省(DHS)に対する資金確保にも使われています。OBBBAにも2029年9月30日まで利用を可能とする条項が含まれていますし、今年6月にリコンシリエーションを利用して成立した米国安全保障法(Secure America Act(P.L. 119-98))にも、2029年9月30日までDHSに対して利用可能な資金を認める条項が含まれています。

仮に、リコンシリエーションにより、2029年9月30日まで利用可能な国防関係の歳出権限が付与されれば、その資金については毎年度の歳出法によって改めて歳出権限を確保する必要がなくなります。このため、2027年から始まる120会期で民主党が下院の多数党となった場合でも、既に成立した法律に基づく資金は、法律が定める目的、金額および期間の範囲内で利用できます。

確かに、次の会期で、両院で民主党が多数党になった場合、リコンシリエーションを利用して、これを改正または廃止する法案を可決することは可能です。しかし、トランプ大統領が改正法案に対して拒否権を行使すれば、両院でそれぞれ3分の2以上の賛成で再可決する必要があります。つまり、複数年度の予算権限が一度成立すれば、現政権中に覆すことは政治的に極めて困難です。

ただし、レームダック・セッション中に、リコンシリエーションによる国防予算を確保することは、それほど容易ではないかもしれません。

リコンシリエーションを利用するには、まず、上下両院が同一内容の予算決議を可決し、その予算決議に含まれる予算調整指示に基づいて法案を起案しなければなりません。下院で起案された予算決議(H.Con.Res.113)は、7月22日に下院で可決され、上院に送られ、翌23日にカレンダーに掲載されました。また、上院で起案された別の予算決議(S.Con.Res.39)は、8月7日に上院のカレンダーに掲載されました。しかし、いずれの決議案も上院本会議での審議には至っていません。また、両決議が認める調整枠の金額は、政権の要求額を大きく下回ります。

共和党上院議員の中にも、再度リコンシリエーションを利用して国防費を歳出することに慎重な意見が複数あり、ヴォウト局長の期待どおりに進むかは不透明です。

防衛産業に関わる日本企業にとって、注目すべき点は予算総額だけではありません。資金が単年度か複数年度か、下院多数党が交代しても利用できるかによって、米国での調達需要や投資判断の予見可能性が変わります。NDAAだけでなく、リコンシリエーション法案に盛り込まれる資金の対象と利用期間にも注目する必要があります。

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