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September 28, 2026

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中国依存を減らせるか――米国議会が進める電池リサイクル法案と重要鉱物サプライチェーン

先週は、アメリカがディーゼルの輸出禁止を検討しているというニュースが報じられました。これに関連して、クリス・ライト・エネルギー長官は、輸出できないディーゼルの貯蔵余力がなくなれば製油所が稼働を落とし、その結果、同時に生産されるガソリンやジェット燃料の価格を押し上げかねないと発言しています。その後、ホワイトハウスは「90日間の輸出禁止を準備している」との報道を否定し、ライト長官も、一律の輸出禁止ではなく、ガソリンやジェット燃料の供給を維持しながら国内のディーゼル供給を増やす方策を検討していると説明しています。一方、トランプ大統領はディーゼル輸出を抑制する考えを否定していないようです。

ディーゼルの輸出禁止のニュースによる動揺は一旦落ち着いたようなので、今回は、下院が9月15日に超党派で可決したリチウムイオン電池のリサイクルに関連する法案を取り上げます。

Battery Recycling for America’s Competitive Economy Act(アメリカの競争力ある経済のための電池リサイクル法(BRACE Act))は、共和党議員が提出者となり、民主党議員を含む共同提出者が加わった超党派法案です。6月24日の環境小委員会公聴会では、法案の前身となる討議草案が検討され、その後、委員会での審議を経て9月14日に下院へ報告されました。下院は翌15日、通常の審議規則を停止する「規則停止」の手続で法案を可決しました。

超党派の支持を得ている背景には、リサイクルをcritical minerals(重要鉱物)の国内供給を確保するためのサプライチェーン政策の一環として捉える共通認識があるようです。公聴会では、使用済みリチウムイオン電池がアメリカ国外、主に中国に送られ、そこでリサイクル処理が行われていることから、リサイクルを含む重要鉱物のサプライチェーンを中国が掌握し、アメリカが、回収可能な重要鉱物と国内での処理能力を失っているとの問題意識が、両党の議員や証人から示されました。

現在の法律・規則が、なぜリチウムイオン電池のリサイクルの障壁になるのでしょうか。

6月24日の公聴会では、Resource Conservation and Recovery Act of 1976(1976年資源保全回収法、RCRA)に基づく規制について、複数の証人が問題を指摘しました。

環境法を専門とする弁護士は、現在のRCRA関連規則の多くがリチウムイオン電池が広く普及する以前に整備されたものであり、現在の電池技術を十分に想定しておらず、その結果、リチウムイオン電池や関連物質は、価値ある資源としてではなく、原則として「廃棄物」として扱われていると証言しました。

特に議論となっているのが、使用済み電池を破砕して得られるブラックマス(black mass)です。ブラックマスは、リチウム、コバルト、ニッケル、マンガンなどを含む電池リサイクル工程上の中間生成物です。市場では取引される価値ある物質ですが、環境保護庁の規則上は一般に固形廃棄物として扱われます。環境法を専門とする弁護士は、この分類が国内での回収を難しくし、追加的負担を課している一方で、その負担に見合うだけの環境上の利益があるのか疑問だと指摘しました。

今回、下院を通過したBRACE Actは、具体的に何を変えるのでしょうか。

現時点のBRACE Actには、大きく分けて三つの要素があります。ここでは、そのうち特に重要な二つを取り上げます。

一つ目は、環境保護庁に対し、法律成立から18か月以内に、リチウムイオン電池に関する一定の要件を改定する規則を策定することを求める規定です。

二つ目は、規則が制定されるまでの間、暫定的な措置を講じるという規定です。

公聴会で、ブラックマスが固形廃棄物と分類されることが問題であると指摘したリサイクル業界の証人もいましたが、法案に分類の変更は含まれていません。

現行法では、RCRAとその規則によって、電池は、固形廃棄物の一部であるユニバーサル・ウェイストとして、通常の有害廃棄物よりも簡素化された規制の下で管理することができます。リチウムイオン電池もこの対象となります。一方、リチウムイオン電池をリサイクルする施設は、「Destination facility(最終搬入先施設)」として扱われますが、使用済みリチウムイオン電池が「最終搬入先施設」に到着すると、ユニバーサル・ウェイストとしての扱いは終了し、通常の規制が全面的に適用される有害廃棄物として取り扱われ、より厳格なRCRAの規制が適用されます。特に、リサイクル前に電池を保管する場合には、RCRA上の許可を取得する必要があり、複雑な手続きやコストが負担となります。

BRACE Act は、環境保護庁が規則を改定するまでの間、暫定的に、リチウムイオン電池のリサイクルを行う「最終搬入先施設」について、「Large quantity handler of universal waste (大量のユニバーサル・ウェイスト取扱者)」であるものとみなして「大量のユニバーサル・ウェイスト取扱者」に適用される規定を適用します。つまり、リチウムイオン電池をリサイクルする「最終搬入先施設」が、「大量のユニバーサル・ウェイスト取扱者」に適用されるユニバーサル・ウェイスト取扱いの要件に従って、リサイクル前の電池を保管できるようにします。

下院では超党派で可決したBRACE Actですが、9月16日に上院へ送付されたものの、現時点では上院での審議は行われていません。中間選挙の結果によっては、上院審議の優先順位が変わる可能性もあって、今会期中に審議・可決されるかは不透明です。ただ、両党の議員が、リチウムイオン電池のリサイクルを重要鉱物の国内供給を確保するためのサプライチェーンの一部として捉えていることから、成立の可能性も十分あるでしょう。

6月24日の公聴会で、環境小委員会のゲイリー・パーマー委員長が投げかけた質問が印象に残りました。パーマー議員は、中国は環境への影響をアメリカほど懸念していないため、リチウム、コバルト、ネオジムの抽出を大規模に行う技術を発展させてきたと指摘しました。そのうえで、環境への配慮が求められるアメリカにおいて、現在、これを大規模に行う技術をアメリカまたは同盟国のいずれかが持っているのかと質問しました。「アメリカまたは同盟国」という言葉には、重要鉱物のサプライチェーンを同盟国と協力して構築するという発想が表れているように感じました。環境への負荷を抑えたリチウムイオン電池のリサイクル技術を持つ日本企業が、アメリカでどのような役割を果たせるのか、今後注目していきたいと思います。

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